シャドーイングで、スピーキングをスピードアップ

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通訳者として働き始めて、周りが見えてきてスキルアップをしたいと思う時期が来ます。昔のわたしもそう思いましたので、Google先生に聞いてみました。――シャドーイングに尽きるようでした。長年この仕事をしてきて、わたしも心から同意します。

わたしの朝のルーティン。この BBC のポッドキャストシリーズでシャドーイングします:
https://www.bbc.co.uk/programmes/p02nq0gn/episodes/downloads
再生ボタンを押して、ただひたすらシャドーイングします。その日の脳の状態がどうであれ、淡々と、続けます。長い週末の後で英語から離れた数日間を過ごした後も、シャドーイングをすると一瞬で「通訳者としてのベースライン」に戻れます。

何をシャドーイングするか

最初はまず、シャドーイングの対象を選ぶところから始まります。わたしが通訳学校に行っているころからすでにVoice of Americaは、英語を勉強したい人に勧められてきた番組でした。

フィリピンで暮らしていたころ、ケーブルテレビでよく見ていたBBCに耳が慣れていたので、BBCでシャドーイングすることにしました。次はプログラムを選びます。わたしはポッドキャストから選ぶことにしました。エンターテイメントのポッドキャストはシャドーイングも比較的楽だと思っていましたが、Global newsに決めました。さあ、シャドーイングしてみよう!と思っても、初めは数分しかできませんでした。わたしの場合は始めて数分もたたないうちにどんどん唾液が口の中にたまってしまうのでした。

シャドーイングで自覚できること

続けていれば、連続でシャドーイングできる時間が少しずつ長くなります。脳が聞いて口でシャドーイングする、これができるようになると、聞いたことを即時に訳出できる、つまり同時通訳ができるように脳が働くようになるのです。

シャドーイングは、教材では学べない気づきを自然に教えてくれます。

  • 自分にとって心地よいアクセントがわかる
  • 慣れていないアクセントがわかる
  • 自分が長年していた発音の癖や誤りに気づく
  • 得意な話題、苦手な話題が浮き彫りになる
  • そして意外にも、自分が英語を話すスピードが速くなる

特に日本人の「バイリンガル」の多くは、発音が綺麗で語彙も豊富なのに、「ゆっくり話す」傾向があります。
シャドーイングはこの壁を越える最強の訓練です。口と脳がようやく同じスピードで動き始め、ためらいが消えていきます。

さらに、毎日シャドーイングしていると、不思議ですが「自分の英語の人格」が固まってきます。どんなリズムで、どんなトーンで、どんな雰囲気で英語を話したいのか――自然と選べるようになるのです。


シャドーイングにおすすめのニュースメディア

わたしがおすすめするのは、BBC のシリーズです。自分が慣れているからです。また、特派員が地球上に散らばっていますので、バランスよく異なる話者・アクセント・話題に触れられることもとても気に入っています。

以下は、英語を勉強したい人や現役通訳者が聞いているニュース媒体です。

https://www.bbc.co.uk/learningenglish/english/features/learning-english-from-the-news_2025/251022
英語学習者向けに作られた短いニュース教材。
話し方は明瞭で、旬の話題を扱い、語彙ポイントの解説もあります。
シャドーイングのウォームアップにも最適。

https://www.voanews.com/
アメリカ英語がベースで、国際情勢から文化、テクノロジーまで幅広い内容。
話すスピードは適度で、アクセントも安定しています。
アメリカ英語のリズムを身につけたい人に最適。

https://edition.cnn.com/videos
テンポが速く、エネルギッシュで、時に即興的。
現場レポーターや速報スタジオなど、「ネイティブが本当に話すスピード」を体感できます。
上級者向けのスピード強化トレーニングに。

https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/
日本と海外のニュースが混ざった、落ち着いた語り口の英語ニュース。
非ネイティブの放送者も多く、日本人にとって理解しやすいアクセントが多いのも特徴。
教科書英語から「世界の英語」への架け橋として最適。

https://www.aljazeera.com/videos/
中東、アフリカ、欧州、アジアなど多様なアクセントの英語が聞ける貴重な媒体。
グローバルで実際に使われている英語に触れたい人には絶対におすすめ。
物語性のあるレポートが多く、長い文や複雑な構文のシャドーイングにも向いています。


シャドーイングは「マルチペルソナ」訓練

通訳者の訳出を左右する最大のポイント――スピード。日本語圏の人は、会話と会話の間に、数秒の間が空きます。その人が英語を話しても、日本語の時と同様に数秒の間が空きます。今のビジネスシーンではそれを「自分が話すきっかけ」だと思う言語圏文化圏の人とも会議しているわけですから、通訳者であればスピードアップして訳出したほうがいいと思っています。これにもシャドーイングが助けになります。

毎日、さまざまなニュースをシャドーイングしていると:

  • 反応速度が上がる
  • 英語本来のリズムが身につく
  • 音が研ぎ澄まされる
  • 無意識の自信が生まれる

気づくとあなたは、「日本語を英語に訳してから話す」のではなく、「英語で考え、英語で話す」状態に近づいています。

シャドーイングは華やかなトレーニングではありません。30分はなかなか長いです。SNS に投稿できる成果物もありません。でもね、これが基礎体力であり、すべての勝負を決めるトレーニングなのですよ。

続けているうちに、ある日ふと気づきます。「あ、わたし、前より速く、自然に話せている」と。

数分からで大丈夫。
完璧にしようとしなくていい。
ただ、音声を追って同じことを発音するだけ。

その小さな積み重ねが、確実にあなたを変えていきます。

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Work, Walk, Law, Low——わたし達の一音

発音の正確さは、通訳・翻訳の「見えない信頼」を支える技術です。AIのパイオニア、Babak Hodjat 氏のもとで働く世界トップクラスのエンジニアたちは、文脈や異なる言語体系(!)で互いを理解しています。わたしたちは通訳。一音の精度を上げ誤解を生まないよう、日々訓練を重ねています。