優秀な通訳チームはどこにいる?

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P社というフィンテック企業で働いていた頃のことを、しばしば思い出します。 数ある通訳の現場の中でも、あの時期が特別だったのは、「チーム」が素晴らしかったからです。

当時、10名の通訳が在籍していて、全員がしっかり訓練を受けたプロフェッショナルばかり。 男女比も4対6、日本人と外国人のバランスも6対4。 年齢も20代から50代までと、まるで多様性のサンプルのような職場でした。
しかも、そのうち2人は JACI同時通訳グランプリ の優勝者(オーストラリア人男性)と準優勝者(アメリカ人男性)。「そりゃチームのレベル高いわけだ」と、今でも納得します。

でも、他社と大きく違ったのはスキルだけではありませんでした。 チーム全体がフレンドリー、誰かが困っていれば、助けを求める、手を差し伸べる様子が日々普通に見られました。 定例ミーティングやカジュアルな雑談会、チームビルディング、ピアレビュー(チームメンバー同士が事前に設定された基準に沿って評価しあう)、通訳者のワークロードや、品質改善活動などを通して、 お互いの信頼関係を育てていました。 プロ意識と人間味、その両方が絶妙なバランスで存在していたんです。わたしにとって「最高の通訳チーム」でした。

わたしが離職した後、そのメンバーの多くも離職したと聞きました。ちょっと驚きましたが、正直「そうだろうな」とも思います。 というのも、同社の会議のテーマはUI/UX中心で、なかなか広がりがない。成長や新しい刺激を求める通訳者にとっては、次のステージに進みたくなるのが自然な流れだからです。

だからあのチームは、もう存在しないの。わたしの思い出の中だけです。


言わずもがな、どこで働くかは大事です。 なぜなら、わたし達の役割はスキルとコンピテンシー(適性)によってご縁が決まるからです。能力が求められて、報酬も合意する。──そして、仕事に就くものですね。

その後、誰とどう働くかはもっと大事ですね。周りの人たちは、ある意味で自分自身の「鏡」だからです。仕事場での出来事は、何を学ぶべきか、何を手放すべきかを時に痛烈に、時にやさしく教えてくれます。人間関係や仕事上でのトラブルを「自分の軌道を修正する」チャンスと受け止めるか、「そもそも自分のことではなかったのだ」と自分のエゴを引っ込めるか、「もう十分やった」と手放す判断をすることもある。 あるいは、「完璧を求めすぎてたな、あ~また日本人やっちゃった」と、力み過ぎだった自分にストップをかける必要があったのかもしれません。

これは銀座まるかんの斎藤一人さんがお勧めする「美化活動」を自分なりに実践しているのですが、おかげさまでストレス性の胃酸過多(ハイパーアシディティ)も、即座に落ち着きます(笑)。


斎藤一人さんは「仕事は選ぶものじゃないの仕事がその人を呼ぶの」と言っています。YouTubeの動画では「もし今の仕事がつまらないと感じるならもしかしたら、あなた自身が少し“つまらない”人なのかもしれないね」というような説明でした。 

わたしはP社離職後、今の職場に来ました。男女比は0:10、日本人と外国人比も1対9。みなし残業がついた給料体系とフレックス制なのに9時から6時の勤務にこだわるとか、着任当初は「このご時世に、昭和で聞いたような会話だ」と思ったのでした。

ひとりさんの教えからひも解くと、わたしが「どっぷり昭和」だから?

そう思って改めてチームを眺めてみると、「ああ、今の自分はここがちょうどいいのか」とか、「自分にこそまだまだ伸びしろがあるのか」と納得できたりしますよ(苦笑)。

そうしてもう一度職場を見ると、呼ばれた場所もそこにいる人々も、なかなかいい所です

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それでも逐次通訳が大切な理由

最近の通訳界にもAIの技術が押し寄せてきています。AI字幕、瞬間翻訳ガジェット。そしてカフェインが血管の中を流れているような同時通訳者。
そんな中でも、わたしは「逐次通訳」がまだ現場で求められている理由を感じます。たとえば商品設計の詳細を詰める会議では、発注側が設計側に説明するとき、通訳者の訳し方を確認しながら話を進めたいのではないでしょうか。そうして、逐次通訳の需要は存在し続けているのだと思うのです。

A社商談での現実体験

その日の通訳は、ドメイン外だった。テーマは A社と設計ツールの導入商談。 しかし設計の知識も、CADの実務経験もゼロ。
しかし、商談成立までたどり着けた。
繰り返し自分に言い聞かせていたのは、3つの「言霊」だった。