わたしにとって海は大いなる存在です。でも特にセブの海が好きです。わたしがセブを選んだのは、90年代から潜り続け、馴染んで20年近くたった今でも一番大好きな海だからです。
わたしはなぜ潜りたいのか。自分が潜れるからです。そこに海があるからです。海にも自然と人間が織りなしてきた歴史であふれています。
「海よ、潜らせてください」と言って潜ってみてください。懐の深さを見せてくれます。
かつて、閉塞潜水のチャンピオンでジャック・マイヨールというフランス人がいました。彼の自伝的映画『グランブルー』は1988年に公開され、世界中の人がジャック・マイヨールとその功績を知ることになりました。調査潜水に協力し、潜水科学の進歩に貢献しました。彼自身は数々の潜水記録を作りましたが、100メートルに到達したときは49歳、105メートルに到達したときは55歳でした。
親日家の彼は、千葉県館山の海が好きで、家を買って住んでいた時期がありました。館山にはすばらしい仲間たちがいました。大崎映晋氏と成田均氏で、この本は彼らへの賛歌とも言えます。
成田均氏もフリーダイビングのチャンピオンでした。館山の海は潮流が難しくてダイバーが危険な状態になることもあります。海の怖さを知っている本物の海の男です。何度かお会いしましたが、秋田弁が全く抜けず、商売気もゼロ、大変なロマンチストでした。
数年前、千葉県御宿沖でサンフランシスコ号引き上げのプロジェクトが持ち上がった時は、わたしも成田氏のワクワクが伝染してしまいました。
大崎氏には直接お会いしたことはありませんが、水中写真家、水中考古学者、海女文化研究家。戦中は海軍水路部勤務、真珠湾攻撃時の「無線方位図」製作。戦後、名取洋之助門下となり岩波写真文庫制作スタッフ、内外の映画の水中撮影など。国際コンクールで受賞。70年、ジャック・マイヨールがフリーダイビング世界記録を出した時にサポートしました。
大崎氏は「日本は周囲を海に囲まれた海洋国家であるにもかかわらず、自国の領海内に沈船が何隻あるかも調べていない、水中考古学が発展していない国である」と嘆いていてます。
ジャックマイヨール氏と大崎氏と成田氏が生きてきた海を感じてほしいと思います。