90年代、セブに住む独身の外国人女性は、ハナの他にわたししかいなかった頃でした。
男性ばかりのレストランに入ると、女性はぎょっとすることがありませんか?逆の場合は、男性がぎょっとするのでしょうが、当時のセブはあらゆる場所で白人男性が中心の世界が、(もちろん、場所によっては日本人男性中心の世界もありましたが)どどーんと繰り広げられてたのです。彼らが同伴する女性は、ほぼ全員フィリピン人でした。独身の白人女性や、東アジア系の女性は本当に少なかったのです。そして、ハナとわたしはお互いを「血のつながらないシスターズ」、blood sisters(もともとは、お互いの腕をナイフなどで切って、血を混ぜることで姉妹の契りを結ぶ儀式をした女子達を指した言葉)と呼び合ったのでした。
ハナはスイス人でした。一年の半分をスイスで郵便の仕分けをして過ごし、もう半分をフィリピンでロッジとレストランのオーナーとして過ごしていました。美しい女性で、毎日、いや、毎時間、誰かからbreath taking(目を見張るような)とか、stunning(美しすぎる)とか、statuesque(彫刻のような)とか、ありとあらゆるほめ言葉を毎日浴びているような女性でした。
フレンドリーで、大酒飲みでした。日本のダイビング雑誌がモアルボアルの取材で訪れたとき、スケジュールが押せ押せになってハナのところにカメラマンが到着した時は、すでに夜も更けていました。彼女は相当酔っぱらっていて、カメラが連続でシャッターを切っている間に、ゆっくりと大木が倒れるように倒れ、二本の足を宙に浮かせていました…。
自分にセブ行きを封じていましたので、マンフレッドが心臓を悪くしてから、やっとセブにお見舞いに行きました。あるドイツ人のダイビング・インストラクターに、「ハナを見ないんだけど、どうしてるのかな?」と聞いたら、怪訝そうな顔で、「ハナは死んだよ」と言われました。乳がんだったそうです。聞いた時には、亡くなって3年も経っていました。ハンマーで頭を殴られたような気がしました。
- 人の一生は短いのです。何かに気を取られているうちに、終わってしまうのです。
Life is short. It ends when you are looking away.
自分もそうでしたが、介護をすると決めると、わき目もふらずに、必死になってしまう人が多いようです。できる限りのことをしてあげたい、いいお医者さんに見てもらいたい。素敵なお考えだと思います。でも、介護を始めたら、十年は続くのです。自分の年齢に10を足してクールに行きましょう。
- 人の一生は短いのです。何かに気を取られているうちに、終わってしまうのです。
Life is short. It ends when you are looking away.
Life is short (人生は短い)は、cliche(決まり文句)です。Enjoy it while you can(楽しめるうちに楽しもう)と、セットで使われます。
バーでビールを飲むとき、誰かがLife is shortと言って、瓶やグラスを上げると、ほかの誰かが、Enjoy it while you can と、受けて、乾杯をするみたいな感じで、知らない者同士が盛り上がります。