思い出す出来事が、時系列にならず先に行ったり後に戻ったりします。脳の記憶には、時系列が存在しないそうです。本当にそうだなと思います(話が飛ぶといわれる人も、それ自体は気にしなくても大丈夫ですよ)。
さて、わたしはエンジェルを見たことがあります。
まだ母がグループホームにいるとき、毎月一度立川共済病院の精神科に通院していました。始め、歩いて15分ぐらいで通院していましたが、だんだん時間がかかるようになりました。40分以上かかるようになったころから、車椅子で通うようになりました。
そんなある日の帰り道、南武線の踏切が鳴り始めました。この距離なら渡れると思って渡り始めたものの、遮断機の竿が、母の膝の上に降りてしまいました。竿はなかなかの重さでした。なんとか持ち上げたら、車椅子に手が届かない、車椅子を押そうとすると、竿に手が届きません。母はニコニコとただ座っていました。母には事態が理解できていないのでした。2車線のうち、わたしたちが足止めを食った方の線路上に近づいてくる電車が見えました。
- わたしはなんてことをしてしまったのだ。
What have I done to myself?
踏切待ちの車から、親子らしい女性の二人連れが下りてきて、竿を持ち上げて「出られますよね」と言ってくれました。無事に踏切から出してもらって、何とお礼を言っていいかわからないと言ったら「いいんですよ、こんなこと。気を付けてくださいね」と言って、バイバイのように手を振って、車に戻って走り去ってしまいました。ありがたくて、ホッとして、自分の愚かさも情けなくて、道端でしゃくりあげて泣きました。今思い出しても、涙が出てきます。
あの時のお二人は、あの日の前にも後にもお会いしたことがないし、名前も知らないし、もうお顔も、どんな車に乗っていたかも覚えていません。でも命の恩人でした。お二人が車から出てきたとき、お二人はわたしの前に人間の姿かたちをしたエンジェルとして現れた!と思いました。
人は誰かを助けようと決めたときに、エンジェルになるのでしょうか。それとも誰かが助けを求めたとき、エンジェルが人の身体を借りるのでしょうか?
- わたしはなんてことをしてしまったのだ。
What have I done to myself?
自分がしたことで、自分のマイナスになってしまい、自分を呪うようなときの定型句です。
自分がしたことを見てみなさい!とたしなめるとき、そしてそれが、自分の考えが足りないために自分のマイナスになるようなとき、Look what you have done to yourself.
注意不足が原因で粗相をした人に「なんてことをしたんだ」みたいなニュアンスで注意するとき、Look what you have done!