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今日は若年性痴呆の母がグループホームに入居してから後の話です。

ケアマネさんや、グループホームの職員さんから、何度か質問されました。

    「こんなことを聞いていいかわからないんですけど、お母さんは昔、犯罪に巻き込まれたことがあるのでしょうか?」
    “Do you mind my asking, has your mother ever been involved in any sort of crime?”

母は、ここだけの話をするような動作で、片手で口元を隠しながら、相手の耳元に「あのね、みーんな殺されちゃったの」というのでした。誰が、とか、どこで、いつというようなストーリーは一切なくて、そのセリフを繰り返すだけなのでしたが、病状が進んで口が動かせなくなるまで言い続けていました。

母は、わたしが知る限り犯罪に巻き込まれたことはありません。しかし、私たち姉弟が知っているのは、母の人生の一部でしかなかったので、もしかしたら、犯罪に巻き込まれたこともあったのかもしれません。四角四面に真実を追求するよりも、相手のゲームに乗ってあげることが、いい時もあります。「みんな殺されちゃったの」は、後者だったのかなと思います。

グループホームに入ってから、精神科のS先生に月に一度診察してもらいました。はじめの頃はグループホームから二人で歩いて通いました。やがて、手をつないで母を引っ張りながら歩かないと母の気が散るようになってきました。さらに月日が経って、歩くのが辛そうになってきたので、車椅子に乗せて押して通うようになりました。母の言動は、わけがわからないこともありましたが、そのいくつかは先生に、種明かしをしてもらいました。

    ○鏡に映った自分に喧嘩を売ること。これは、母が自覚している年齢が35歳だったので、鏡に映る自分の姿が、自分に思えないから。
    ○母は娘がいて、名前もマキだと認識している。母が35歳の時、わたしは10歳なので10歳でないわたしは母には娘と認識されない。
    精神科の先生に診察して助けていただいていたのは、痴呆の母ではなく、わたしだったなあと思うのでした。

    「こんなことを聞いていいかわからないんですけど、お母さんは昔、犯罪に巻き込まれたことがあるのでしょうか?」
    “Do you mind my asking, has your mother ever been involved in any sort of crime?”

何かを尋ねる時に、その許可を求める表現です。観光業など、お客様にお仕事はなんですかと聞いてもいい時と良くない時があります。
Do you mind my asking, what do you do for living? と質問すると大丈夫な時は、返事が返ってきますが、良くない時は Actually I doという返事が返ってきます。

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