Releaseあるいは死神

Date

「このカードは、プロジェクトやあなたの人生のフェーズが完了したので、次に進む時期が来たことを示します。同じ状況にとどまることに利益はありません。古いものは捨てて新しいものを受け入れましょう。終わりが来て、ほっとしたり悲しい思いをしているかも知れません。どちらにしても、あなたは成長してしまったので、去るべきです。」

先日、遠い親戚に不幸がありました。

わたしの直近の家族の介護のフェーズは終わりましたが、こういうことがあると、自分の体験がフラッシュバックのように戻ってきます。

わたしの母は脳梗塞から、若年性痴呆を発症しました。当時、母は58歳だったので、どこの病院や施設でも、「あなたのお母さんは、この先痴呆のまま20~30年生き続けますよ」と言われたものでした。

今は医学が進んだり、症例が集まって家族は違う説明を受けているとは思います。この診断自体はショックではなかったのでした。ショックは別のときに来ました。

ある年、母の健康診断結果の説明を聞き、最後に主治医の先生から付け足しのように言われたアドバイスがありました。「この先長いですからね、面倒を見られるご自身の生活を考えて、今後どういう介護をしていきたいか、ご家族や親戚と相談されたらいいと思いますよ。」

詳しい話は古いブログで紹介したこともありますが、ここでは止めます。わたしの頭には、「あなたのお母さんがこのまま生き続けても誰も幸せにならない。」と言うメッセージを受け取りました。30代前半のわたしは、母の人生の終わりを決めなさいと言われて、ショックを受けました。わたしが誰かの人生を終わらせるとはどういうことなのか。

病院から駅まで、歩くには遠すぎる距離を、歩き始めました。雨が降り始めて、土砂降りになりました。傘をさしても、さしていないかのようにびしょぬれになりました。それでも、歩きやめると答えを出さなければいけないような気がして歩き続けました。結局、答えは出ませんでした。

後でわかるのですが、問題が出されたら答えは用意されているのです。

だから、一生懸命悩んでも、それが終わったらリリース、手放しましょう。それが親でも、パートナーであっても、仕事であっても、手放して大丈夫ですよ。

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