The big blue and small ego

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1988年の映画で「The big blue」というリュックベッソン監督の映画がありました。日本では「グラン・ブルー(Le Grand Bleu)」と言われ、フリーダイビングの当時の世界記録保持者であったジャック・マイヨール氏の半生をドラマ化したものです。この映画自体は確か大ヒットしたと思います。エリック・セラさんのテーマ音楽も、わたしたち日本人ダイバーのこころを捉えて離しませんでした。

ハワイにインターンターンシップに行っていたときに、カナダ人のダイビングインストラクターがこの映画の中で使われる〝Science is the cruel mistress|科学は残酷な情婦だ〟というセリフを〝 Diving is the cruel mistress|ダイビングは残酷な情婦だ〟と言い換えて使っていました。

フィリピンに移った後も日系のダイブショップでは、ログブックを付けたり、ちょっとお茶が飲めるスペースではこの音楽が流れていました。イルカの声にインスパイアされたこのテーマ曲。今聞いても夜明けの海に潜っていく様な気持ちにさせられます。

なんとなく笑った様な顔のイルカ。海の中では、いたずらのチャンスをうかがっている様な、元気な子供の様なエネルギーでこちらを見ることがあるかと思えば、ドルフィン・ウォッチングのボートからは、そのボートと並走する姿に突き抜けた跳躍感があって、わたしたちをとても爽快な気分にさせてくれます。

わたしは親の介護のためにフィリピンでのダイビングの仕事を辞めて、いったん日本に帰国しました。それからちょっと自分を見失って、インドネシアのマナドへ行ったことがあります。そして滞在の最後のダイビングを終えてボートの上でウエットスーツを脱いだときに、イルカの群れに偶然に出逢いました。

シュノーケルを付けて泳いだらいいと言われて、水着のままシュノーケルとフィンを付けてイルカの群れの真ん中にエントリーしました。素晴らしい偶然のせいで、わたしの興奮は最高潮。ゴムフィンなのでフィンは水面に出さず、キックは大きくゆっくりするべきなのですが、まるで初めてフィンを付けた人の様にバシャバシャと波を起てて、我を忘れて不格好に泳いで、水面にも水中にも右にも左にも前にも後ろにも見渡す限り何百匹といるイルカ達の姿に大興奮していました。

そのときにイルカの話声が聞こえました。このビックブルーの中でも聴いた音です。

声の感じと、話しているイルカの動作やわたしの方を振り返った顔の表情(!)から…
『うるさいやつが追いて来るぞ~』
『あー人間だ、あれなら泳ぎも下手だし、害を与えないから、ほっとこうぜ~』
と言われたことを感じました。イルカたちには動作があったのでわたしの気でせいではなかった、と今でも思っています。

ダイビングのインストラクターだとか、経験とか、テクニックとか、そういった人間の基準が全部一瞬にして吹き飛ばされて、生き物として認識されて受け入れられたすごい瞬間にいたあのときを、この曲を聞く度に思い出します。

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