Work, Walk, Law, Low——わたし達の一音

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発音の正確さは、通訳・翻訳の「見えない信頼」を支える技術です。AIのパイオニア、Babak Hodjat 氏のもとで働く世界トップクラスのエンジニアたちは、文脈や異なる言語体系(!)で互いを理解しています。わたしたちは通訳。一音の精度を上げ誤解を生まないよう、日々訓練を重ねています。

期待される精度

CognizantでChief AI Officerとして”君臨”するBabak Hodjat さんのもとには、世界中から集まった “最も頭のキレる人たち” がいます。姓から判断すると、フランス系だったり、スカンジナビア系だったりする人達がいます。アクセントもさまざまで、そこから予想すると母国語も、さまざま。研究・開発エリアが違えば、皆さんの バックグラウンドも、さまざま。

一方で、チームの皆さんの仕事は、Generative AI(生成AI)と Agentic AI(エージェントAI)です。つまり、人間の言語を理解し、質問に答えるツールを開発すること。彼らはAIを美しく作り上げるために給料をもらっているのです。

だからチームの誰かが “walk” と言っても、本当は “work” のことだったとしても、誰も困りません。文脈が助けてくれる。意味は通じる。会話は止まらない。
—— 発音の正確さは、そこでは本質ではないのです。

でも、わたし達は違います。
わたし達は通訳者であり、翻訳者であり、伝達のプロ。
わたし達の仕事の本質は「正確さ」と「明確さ」です。

“work” と “walk”、
“law” と “low”、
“row” と “raw”、
その一音の違いが、会話の方向性を違う方向へ転換してしまうことも意味します。

わたし達の仕事は、意味を滞らせないこと。 聞く人が一瞬でも「ん?」と思わないこと。つまり、存在を感じさせないほどに「伝わっている」ことなのです。


では、どうやってそれを身につけるのか。それは「聞く」ことから始まります。たくさんの英語を聞き、リズムやイントネーションを体に染み込ませる。意味も考えるが、音を真似する。

発音を磨くのは、虚栄心ではなく、精度のために磨くものです。

精度向上の練習法:

  1. シャドーイングを日課に。 5分の英語音声を完璧に真似する。意味よりリズムを追う。
  2. 録音して聞く。 自分の声が一番の先生。
  3. ミニマルペアの練習。 “work–walk”、“law–low”、“row–raw”。耳が納得するまで。
  4. フィードバックをもらう。 他人の耳が自分の盲点を教えてくれる。
  5. 観察する。 口の動き、声の高さ、間の取り方——全てがヒント。

それぞれの技

発音を間違えても許されるチームも存在します。しかしわたし達は、言葉を磨き、使うことで信頼を築きます。

一方で、AIチームは「回答を提供するツールに人間の言語を理解させる」。
わたし達は「人間同士を会話させる」。

これはわたし達の技です。そして、誇りです。

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発音の正確さは、通訳・翻訳の「見えない信頼」を支える技術です。AIのパイオニア、Babak Hodjat 氏のもとで働く世界トップクラスのエンジニアたちは、文脈や異なる言語体系(!)で互いを理解しています。わたしたちは通訳。一音の精度を上げ誤解を生まないよう、日々訓練を重ねています。

空のように、私のノートの取り方もかたちを変えていく。それでいいのです。

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逐次通訳では、ノートテイキングが訳出を左右します。 端的に言って手元に文字起こしとか、原稿に近いものがあれば、それを読めば正確に訳出できるのです。一つひとつの言葉、数字、そしてニュアンスを話すスピードに合わせて書き留めるのは、匠の技です。今日は速記と抽象画のあいだのような芸術の話をしようと思います。

優秀な通訳、溝をつないで次のステージへ

優秀な通訳チームはどこにいる?

P社というフィンテック企業で働いていた頃のことを、しばしば思い出します。 数ある通訳の現場の中でも、あの時期が特別だったのは、「優秀なチーム」を全員が作っていたからです。では、どうやって?