母の介護の初期の頃、母が脳梗塞で通院していた脳外科医に話を聞きに行ったとき「あなたのお母さんは精神分裂病です」と爆弾誤診を言い渡されました。それが誤診だと知るまで、たいへん悩ましい数か月を過ごしました。
- 何度も言いますが、まだ若かったので、母のことは何であっても怖かったのです。
I may be sounding like a broken record, but I was young and easily scared of what happens to my mother.
当時、統合失調症について、インターネットで得られる情報は、まだ少なかったのでした。怖くて知りたくなかったという方が事実に近かったかもしれません。爆弾誤診の脳外科病院からもらった資料は、家族の支援グループばかり、どういう病気か説明がありませんでした。遺伝するのか、遺伝してしまっているのか、弟はどうなのか。母が二度離婚したのは、その病気のせいなのか。これからわたしは母をどんな病院に連れて行けばいいのか。
その後、母は出かけても家に帰る道が分からなくなったり、他所のお宅の玄関を自宅や親戚の家と間違えて開けようとして、警察に保護されたり、を繰り返していました。上司は帰っていいよと言ってはくれるのですが、何しろわたしは怖くて関わりたくない。あの頃のわたしは、怖がっていない時があったのでしょうか。ある日ケアマネさんから電話があり、母が立川相互病院の精神科に入院したと知らされました。病棟に到着したら、棟内には「光るものは患者を刺激するので持ち歩かないでください」などの注意書きがあり、わたしの心はさらに暗澹としていったのを覚えています。
その精神科で、S先生に巡り合いました。母の頭の写真、MRIなどを使って、症状を丁寧に教えてくださいました。優しそうな先生でしたが、わたしはMRIで、吐き気がしました。その前年に自分が大怪我をしてMRIを取るに至った経験が生々しかったのでした。しかし、S先生のお蔭で、母の行動がすべて、痴呆で説明がつくこと、母の脳の写真が、母と同年代で痴呆を発症していない人の脳と比べて明らかに収縮していること、すなわち痴呆であること、痴呆は精神科の範疇であること、統合失調症の発病年齢が10~20代であることから、「あなたのお母さんは統合失調症を発症するには年を取りすぎていますね。」と笑いながら説明してくださいました。脳外科医は認知症は勉強していないとも説明されました。
人の話は、うのみにしないで冷静に疑うことも必要でした。自分の親を、十年間にわたって介護するのに、協力的な言葉が出ない医療従事者、福祉従事者は、要注意と思っていいと思います。その時は、「不完璧で、親の病状を理解していない自分だけど、介護をするのは自分だから、自分がしっくりこない気持ちを尊重して」積極的に他をあたるキューサインですね。
タイトル“Be Careful Who You Trust”は、誰を信用するか慎重に選びなさい。
- 何度も言いますが、まだ若かったので、母のことは何であっても怖かったのです。
I may be sounding like a broken record, but I was young and easily scared of what happens to my mother.
壊れたレコードは同じ場所を何度も何度も再生することから、何度も同じことを言うとき“sounding like a broken record”と言います。レコードがなくなっていく社会では、このレトロな表現もやがては無くなっていくのでしょうか。